またね

背景画像は,鶴崎亜紀子様のコラージュ作品「白鳥の王子: The Wild Swan」です。

ここでは、たくさんのひとたちの思いを乗せて飛ぶ白い翼(航空機)の象徴として。


次の4つの音源は、ドイツ生まれの音声ファイル共有サービス ” SoundCloud(サウンドクラウド) ” に置いています。

このページを離れて同サイトに飛び、私のチャンネルでお聴きいただくこともできます。


16th harvest

音の栞  ~ 小説『風の港』へのファンアート

(著者: 村山早紀先生 徳間書店 2022.3.31 初刷)

書影:版元ドットコム様


以下、ネタバレを含む内容となります。

作品の解釈の誤りなどの至らぬ点や、何をそこまでと苦笑されるところがありましたら、「なんだ、推しの暴走か」と寛大なお心で受けとめていただけますと幸いです。

下線の部分は、本Webサイト内や外部とのリンクです。

 

 

✈✈ はじめに ✈✈

 

『風の港』は、羽田空港の旅客ターミナルを舞台とした物語です。

私にとっては旅の途中に訪れたことがある場所なので、「この場面はあのあたりかな」などと想像を巡らせつつ、その場に臨場するかのように自分を投影して物語に浸ることができました。

 

「どんなお話なの?」

と聞かれたら、

「ひと言でいえば、いろんな ” またね ” がある物語ですよ」

と答えたいと思います。

 

さて、その ” またね ” をタイトルとするこの曲は、本書へのファンアートとしてのリスペンクトソングです。

これが生まれた背景事情は、次のとおりです。

 

私は、本を読んだ後、言葉足らずの感想文の代わりとして、読了記念の栞を作っては、その画像をTwitter (@fillin_music) で公開することがあります。

本書については、『第四話 花を撒く魔女』において、犬や猫たちが春の日差しのもとで愛らしくパレードをする場面がとてもフォトジェニックでしたので(274ページ)、その様を模した切り絵風の栞を作りました。

下記のCDカバーデザイン内側の画像がそれです。

 

その後、Twitter上で、村山早紀先生と徳間書店文芸編集部 O (オー) 様による[ 風の港ひと言感想コンクール ]が開催されました。

私は、この催しに上記の栞をもって応募したところ、鳥たちに飛びかかろうとする〈悪い猫〉の絵柄が妙に受けたらしく、賞品のポストカードをいただくことができました。

” いつも心に悪い猫を♡ ” とのメッセージが添えられて。

 

それはもう、読了記念栞作りの励みとなりました。

そこで、お礼の気持ちも兼ねて、私なりに受け取った本書のエッセンスを歌にし、この物語を言祝ぐことができればと思ったのです。

このひとときの出来事もまたひとつの物語であるとすれば、この曲は、私がそこに居合わせた証として、そっと挟み込んでおく ” 音の栞 ” なのかもしれません。

 

 

♪♪ 本曲について ♪♪

 

羽田空港第1・第2ターミナルの公式出発アラーム音源に続いて曲が始まり、上記パレードを表わすエンディングのメロディが続きます。

パレードの雰囲気は、「とても楽しげ」な「愛らしい」もの(274ページ)。

でも、歩を進めるその子たちは、家に帰る道を失った「弔われなかった魂」なので(255、256ページ)、シンプルなエンディングの旋律には、めいいっぱいの慈しみの気持ちも込めました。

 

歌唱部分は、もしもフルバージョンを作っていたとすれば、そのサビの部分にあたるものです。

下の方に簡単なメロ譜を載せておきますね。

 

歌のスタイルは、女性二人によるユニゾンのツインボーカルです。

大変おこがましいことですが、『第ニ話 それぞれの空』から『エピローグ 空港にて』までに登場する〈 眞優梨(まゆり)〉さんと〈 恵(めぐみ)〉さんが歌う光景が弾けたので、彼女らをモデルとさせていただきました。

 

二人は、恵さんの転居によって中学2年生の2月に離れ離れになるまで、羽田空港の近郊で家族のように過ごした親友同士でした。

でも、眞優梨さんが恵さんのことを想うが故の事件が起こってしまい、きちんとしたお別れはできていません。

(その事件の真相は、二人が33年の時を経て、桜の季節の羽田空港で偶然に再会したことで明らかになります。)

 

当時の恵さんは、痩せっぽちであだ名が〈メガネ〉という本好きの目立たない少女。

眞優梨さんは、子役時代から芸能界に身を置く華やかでめだつ美少女。

そして、恵さんいわく、眞優梨さんの声は、「天使の吹く、高らかなラッパのような声」、「はるかな天から光が差すような、そんな輝きに満ちた声。うたうような声。」(166,167ページ)。

恵さんのそれは、「少しハスキーで、おっとりした、耳に心地よい声。鳩が鳴くような声」(176ページ)と説明されています。

 

シンガーの夕季森 灯様には、これらのキャラクターを踏まえての歌い分けをお願いしました。

二人の歌は、別れの言葉を交わすことなく離れ離れになってしまったあの当時に戻って、もう一度やり直しのお別れをしているかのようです。

 

伴奏は、アコースティックギターとドリーミーなエレクトリックギターをベースにして、これにREN様のまっすぐなピアノを添えていただきました。

  

 

♪♪ タイトル『またね』について ♪♪

 

「またね」は、とっても身近な言葉です。

本書の中では、『第二話 それぞれの空』に登場する〈 夢芽子(ゆめこ)〉さんとそのお姉さんが、さよならの代わりにおばあちゃんと交わした「またね」が見て取れます(101ページ)。

 

また、芸能人である眞優梨さんは、別れの言葉に対して、「おとなたちとどれだけ別れてきただろうか。さよなら、また会おう、忘れない、そんな言葉がどれほど空しいものか、眞優梨は小さい頃から身に染みて知っている。(そばにいなくなれば、お別れなのよ)」(219、220ページ)という複雑な感情を抱いています(219ページ)。

 

その一方で恵さんは、「空港という場所で、それぞれの人生のほんのわずかな時間、交差するように出会い、また別れて行ったひとたちの幸せを願った。またいつか会えたら良いなと思いながら。(いつかまた,この世界のどこかで)どこかでまた,すれ違えたらいいなあ。できればまた,こんな綺麗な光の中で。」(287ページ)と、純粋に再会を望む言葉とも捉えているようです。

 

これに加えて本書では,空港という場所が、次のように説明されています。

・「空に向かって無限の扉が開かれている場所」(71ページ)

・「旅の目的地へ向かうための、あるいは帰るための、ひとつの「区切り」をつける場所。(中略)この同じ朝に、ターミナルにいる旅行者

は、それぞれの人生の旅の途中でもある。」(289ページ)

・「たとえ声をかけることや、会話することがなかったとしても、視線をわずかも交わさなかったとしても、その日その時間に、それまで縁が無

かったはずのひとびとが一堂に会し、同じ場所の空気を吸い、そしてまた、別れてゆく。」(290ページ)

 

以上のことから、悲喜こもごものいろんな思いがこもった 「またね」という言葉がキーワードになりそうだと感じられましたので、そのまま曲のタイトルと歌詞のフックにしたのです。

 

なお、歌詞の核となるフレーズ「いつかまた このばしょで」は、これまたおこがましくも、「(いつかまた、この世界のどこかで)」(287ページ)の一節に手を引かれた本歌取りです。

そして、やはり「風の港」という言葉も入れたく、これを「ばしょ」と読むことにしました。

 

 

♪♪ CDカバーのデザインについて ♪♪

 

切り絵風のタイトル面は、この物語の始まりとなる『第一話 旅立ちの白い翼』から、漫画家の〈 亮二 〉さんがリスタートする様子をイメージしました。

見づらくて申し訳ありませんが、彼が旅立つ先の扉(上記71ページの空に向かう無限の扉のひとつ)には、アパ―トの壁に描いた〈 詩織 〉さんのパステル画の象徴である翼を持つ天使を置いています(23、24ページ)。

これに、風に乗る場所で行き交う人たちが交差する様を表わす図柄を二つ。

シンガーさんとピアニストさんのお名前は、滑走路に乗せて。

 

そして、クレジット面には、羽田空港で運用中のAないしD滑走路を模した区切りを設けています。

ー 滑走路A区画 ー

歌詞の前には、出発アラームの4つのチャイム音を五線譜にしてみました。

若干上がり気味の「E (ミ) ・C♯ (ドシャープ)・ E (ミ) ・A (ラ)」だそうです(調音: REN様)。

 

ー 滑走路B区画 ー

第一話の似顔絵のエピソードから、本来あるべきだった似顔絵の色紙を重ねてみました。

 

ー 滑走路C区画 ー

クレジット関係です。

 

ー 滑走路D区画 ー

下部の表示「Haneda Airport」の右横には、緯度と経度を示す図柄をあしらっています。

これは、飛行場の地理的中心となる地点として、緯度と経度で公示される「飛行場標点」を表わしています。

羽田空港の場合、第1ターミナルビル北ウイングの北側付近に設定されているようです。

具体的な場所は、末尾のGoogleマップを御参照ください。

主な出典:「スカイアートジャパン」様 https://skyart-japan.tokyo/2020/04/29/2020-04-26/

 

 

✈♪ 最後に ✈♪

 

このオールタイム級の物語を生み出された村山早紀先生、そして徳間書店文芸編集部のO様に心からの敬意を。

その舞台となった羽田空港旅客ターミナルには、今日もたくさんの「またね」の言の葉たちが舞っていることでしょう。

  

ま・た・ね

 


おまけの言葉あそびです。

なにやら予感がして、タイトル『風の港』に秘められているかもしれないメッセージを探ってみました(Twitterの修正再掲です。)。

 

1 ローマ字にすると

【 kaze no minato 】

 

2 並び替えてみると

【 konozi matane 】

 

3 「zi」を「じ」と読むと

【 このじ またね 】

おお「またね」が!

 

4 「じ」に〈場所〉に通じる「地」をあてると

【 この地 またね 】

 

5 もう一つ、「じ」に〈時間〉を示す「時」をあてると

【 この時 またね 】

 

6 まとめると

【 この地 この時 またね 】

 

7 なるほど。

『風の港』の中には、「場所」と「時間」、そして「またね」というキーワードが、あらかじめ隠れキャラのように織り込まれ

ていたのかも。 

それはまるで、恵さんの次の想いの結晶のようでもあり。

 

 「空港という場所で,それぞれの人生のほんのわずかな時間,交差するように出会い,

また別れていったひとたちの幸せを願った。またいつか会えたら良いなと思いながら。

(いつかまた,この世界のどこかで)

どこかでまた,すれ違えたらいいなあ。

できればまた,こんな綺麗な光の中で。」(287ページ)

 

「たとえ声をかけることや、会話することがなかったとしても、視線をわずかも交わさ

なかったとしても、その日その時間に、それまで縁が無かったはずのひとびとが一堂に

会し、同じ場所の空気を吸い、そしてまた、別れてゆく。」(290ページ)


illusionists

 

Vocals: 夕季森 灯

Arranged,Piano, Mixed and Mastered: REN (Anddy Mule)  

 

Special Thanks: #風の港ひと言感想コンクール(村山 早紀 先生・徳間書店文芸編集部 O (オー) 様)

                         日本空港ビルデング株式会社(羽田空港旅客ターミナルを管理されています。)


『羽田空港 T1・T2出発アラーム(日本語)』音源使用許諾: 日本空港ビルデング株式会社

 

 Guitar Arranged: fillin

 Guitar: Dave Clevland ( Sampling from "Band-in-a-Box"  )


Lyrics

[ 羽田空港 T1・T2出発アラーム(日本語)]

羽田空港よりお知らせいたします。

お客様の御登録されました飛行機は出発時刻が近づいて参りました。

搭乗口へお急ぎください。

 

またね 

いつかまた

この風の港(ばしょ)で

またね

またね

ま・た・ね



CD Cover Design


タイトル面

クレジット面


内側


[本書のファンの皆様方へ]

カラオケ音源として、①眞優梨さんのパート残し ②恵さんのパート残し ③ボーカルなし この3パターンをご用意しました。

MP3音源とメロ譜のファイルをダウンロードできます。

 

もしも、心に描く眞優梨さんや恵さんになりきって遊んでいただけることがあれば、とても喜びます。

舞台好きの方であれば、劇団四季ミュージカル『夢から醒めた夢』の屈指のナンバー『二人の世界』のような振り付きではいかがでしょうか。

歌の入りのタイミングは、イントロに重ねて「ワン、ツゥ、スリー、フォー、ワン、ツゥ」の後の7拍目です。

ダウンロード
mayuri only.mp3
MP3 オーディオファイル 3.3 MB
ダウンロード
megumi only.mp3
MP3 オーディオファイル 3.3 MB
ダウンロード
Off Vocal.mp3
MP3 オーディオファイル 3.3 MB
ダウンロード
full.mp3
MP3 オーディオファイル 3.3 MB

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メロ譜.jpg
JPEGファイル 240.7 KB



羽田空港の標点( 北緯35度33分12秒  東経139度46分52秒 ) *誤りがありましたら御指摘ください。

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[ 他の楽曲について ]

このほか本Webサイトには、村山早紀先生の作品と関連する曲として、『物語に助けられる〜時を巻き戻す魔法は使えないけれど〜』のページに『いのちの思い出』があります。

これは、私がソングライトに行き詰っていた際、風早サーガの作品群に助けられて形になった曲です。

こちらも併せて聴いていただけますと嬉しいです。